「おかえりなさい。マイヤ様。」


ミーハーバニーは、帰って来るなりぐったりと長椅子に伸びてしまったマイヤに冷たい麦茶を差し出した。
マイヤは、椅子の上からしばらくぼーーーっと麦茶を眺めていたが、やがて、手を伸ばすと、麦茶を一気に飲みほした。途中、飲み損ねてむせた。

「げっほ！げっほ！げっほ！」
「まぁ、まぁ、大丈夫ですか？」

ミーハーバニーがマイヤの背中をやさしくたたいて上げる。
マイヤはしばらくうめいていたが、やっとむせたのが直ったようだ。

「はぁはぁ。あ、ありがとう。」

マイヤは、今度はゆっくりと残りの麦茶を飲み干した。コップをテーブルに戻すとふーっとため息をついて長椅子に寝転がった。

「お疲れでしょう。」
「今回は結構きつかったわ。敵の数の多いこと多いこと。」
「千葉県でしたっけ。」
「そっ。それの北の方よ。自警団だかなんだかしんないけれど、我々にはむかって武力行使とね。てこずったわ。まぁ、敵じゃなかったけれどもね。ほーっほっほっほ。」

マイヤは、この一ヶ月ばかり遠征で千葉県の方にいっていたのだ。
自警団と称して千葉の『ぴょんこの会(仮)』のアジトを襲撃しては、大戦果とばかりにマスコミに宣伝しまくる。なにせ千葉県中のアンチぴょんこの会の戦闘員が集まったといわれただけのことはあり数が多い。
このままほっとくわけにはいかないと、『ぴょんこの会(仮)』の本部からじきじきにマイヤが指揮をとったのだ。

「お疲れ様でした。しばらく、ゆっくりと休んでくださいな。」
「そうそう、その前に。ドクターいる？義手の調整をして欲しいのよ。」

マイヤの左腕は、１年前の東京タワーの決戦で純子に切り落とされている。
つなげることも出来るが、もう元には戻らないといわれマイヤは義手を使うことを選んだのだ。これならば本物と同じくらいに動作してくれ、また、パワーは比べ物にならないくらいでるのだ。欠点といえば定期的なメンテナンスが必要な点であろう。

「ドクターならば、ここ３週間ばかり所沢支部に出かけていますが。」
「所沢支部？なんであんなところに？あそこはただっぴろい倉庫があるっきりで何にも無いところじゃない。」
「さぁ？私も詳しいことは知らないんですが、なんか大きなものを作っているらしいですよ。」
「？なに作ってるんでしょう？」


数日後、その問題の所沢支部からマイヤに連絡があった。新しい兵器が完成したので試運転をおこなうとのことであった。マイヤは、ムサシとヤマトを伴って所沢支部へと赴いた。

「ふっわー。いつ来てもすごいっすね。」

所沢の地下にある超巨大な倉庫である。といってもなかには何も格納されていない。将来的には、地下飛行場として稼動できればということで作成されたものである。
全長１Ｋｍ以上、幅２００ｍ、高さ８０ｍという非常識な大きさであった。

「Ｂ５２でも飛ばせるわね。」
「所沢支部の支部長であるシェアンとかという奴が、冗談と暇にあかせて作り上げたものですから。」
「限度というのを知らないのかしら。(--;;」

マイヤ達はひたすら歩いた。歩いた。歩いた。高々１Ｋｍの距離なのだが、景色がぜんぜん変わらないのでどのくらい歩いたかわからない。
マイヤ達は、いつしか前を向いて歩くことを止め、下を向いて黙々と歩いていた。

マイヤはふっと、声をかけられたような気がして顔を上げた。
目の前には、ドクター松戸のアップがあった。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

戦士としての鍛え上げられた肉体が反射的にバックステップをして、腰のビームサーベルを引き抜こうとした。
しかし、後ろにはヤマトとムサシがいたのだ。マイヤはムサシとヤマトともつれ合い折り重なって転げまわった。

「ふぉっふぉっっふぉ。」
「ど、ドクター！脅かさないでください！！」
「別に驚かせたつもりはないのじゃが。」
「暗闇に立っているだけで十分驚くわよ。」

マイヤは口の中でぶつぶつつぶやきながら、どさくさに紛れてマイヤのお尻を触っているムサシをぶん殴り、立ち上がった。
ぱたぱたと体の埃を払うしぐさをする。

「で、ドクター。今日は一体どのような要件なんでしょう。」

ヤマトが、床に座ったままドクターにたずねる。ちなみにムサシは、その横でＫＯされて伸びている。

「ほっほっほ。今回はワシの最高傑作といっても良いものが完成したのでな、そのお披露目といこうと思ったのじゃ。」
「で、どんなものなの。」
「巨大ロボットじゃ！！」
「「きょだいろぼっと！？」」

ヤマトとマイヤが同時に叫んだ。

「そうじゃ！世界征服を企む悪の秘密結社にとってぴったりの兵器じゃとおもうのだが。どうじゃ？」
「す、素晴らしいですわ！そのようなものがあれば、一気に忌まわしい警視庁を叩きつぶすことも出来ますわ！で？で？どこにあるんです！？」
「まぁ、そう、せくな。こっちじゃ。」

ドクターは、ゆっくりと奥の方へと歩きだした。マイヤははやる気持ちをぐっと押さえて、ドクターの歩調に合わせて歩きだした。その後をムサシを担いだヤマトが続く。

やがて、前方には大きな白い巨大なものが姿を見せた。
とにかく大きい。まだ、１００ｍちかく離れているはずなのにすぐ近くにあるように錯覚してしまう。

「すっごー。」

マイヤが仰ぎ見るように目を細めた。
しかし、薄暗くて形はよくわからない。もっと近くにいって見ようとするマイヤをドクターが押し留めた。

「いや、ここいらでいいじゃろう。これ以上近づくと全体が見えんくなるのでな。」

そうか、とつぶやいてマイヤは形を確かめようと目を凝らした。人型だということはなんとなくわかるがそれ以上はわからない。
ドクターは、白衣のうちポケットからハンディターミナルを取り出した。そのうちの、青いボタンをぽちっっと押す。

「うっ。」

突然、辺りが強力に明るくなった。あわてて目をかばうマイヤ。
徐々に目を開けて行く。やっと目が慣れた時、マイヤの目に幾重にもアップライトされた巨大ロボットが飛び込んで来た。
しかし、それは大きな白い布で覆われいたのだ。

「どおりで。形がわからないわけよね。」
「立派なものですね。」
「おお！女性タイプだ！！」

いつの間にか復活したムサシである。
確かにムサシの言うとおり、巨大ロボットは女性型のようだ。体のラインのやわらかさと胸のふくらみがそれを暗示している。

どこからともなく沸きだした、不良バニーとお嬢様バニーがファンファーレを吹き出した。

「「ぱっぱかぱーーーん！」」
「俺達、出番これだけ？」
「そうでしょう。・・・でもあるだけましですわよ。」

ドクターが、白衣をばさり！と翻した。

ドクター「諸君！今こそ私の、今世紀最高の発明品を発表しよう！！
この巨大ロボットは、身長５７ｍ、体重５５０ｔの大きさを誇る！

その名も
『コンバトラーマイヤ』
だ！！」


ドクターは、同時にハンディターミナルの黄色いボタンをぽちっと押した。すると、巨大ロボットを覆っていた白い布が垂れ落ちた！


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

白い布で覆われていたところには、１体の巨大なマイヤが、”全裸”で立っていた。

マイヤは、全身の神経が静止してしまったようで、さっきからピクリとも動かない。
ヤマトは、最初のショックから立ち直ると、慌てて真っ赤な顔を伏せ、手で顔を覆った。しかし、しっかりと指の間から目を覗かせているようだ。純なヤマト君なのである。対するムサシは流れ落ちるよだれもそのままに、巨大マイヤにくぎずけである。

「説明しよう！この『コンバトラーマイヤ』は、強力な核融合炉を内部に備え・・・・。」

ドクターの延々とした演説をヤマトが遮った。

「その前にドクター。なぜ裸なんでしょうか？」

ドクターは、話しの腰を折られて不機嫌な顔をしたが、ヤマトの質問に答えた。

「うむ。初期の構想では、この後、組織のトレードマークであるバニースーツを着せる予定だったのだが、胸のラインと、太股のラインを構築するのに予算をかけすぎてのう。予算がなくなってしまったのじゃ。
しかし、まぁ、スーツを着てても着ていなくても、性能には大差ないからのう。このままでいこうと思ってな。」

マイヤが急に我に返った。

「い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」